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「紙芝居チャチャチャ」ぺとらの新世界旅行 音楽劇

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深川、墨田川沿いのレトロな印刷工場がブックカフェ「そら庵」になり、
音楽仲間の初代ピアノ屋「岡野勇仁」さんが音楽監督として就任、
いろんなイベントやワークショップも開催されています。

それで、勇仁さんと一緒に「紙芝居」のイベントをやろうと企画して、
シンガーソングライターの「YUKKIY」さんと岡野さんの手作りカラフル紙芝居と共演させていただきました。

「ぺとら」としての活動は、3月に下北沢の親子イベントで「ぺとらのマンドラゴラ」を上演して以来なのですが、わざわざ足を運んでくださった親子さんが数組いらしてくださり嬉しかったです。その他、このイベントに興味を持ってくださった方や、地元の常連の方などで席はいっぱいでした。

思い出に残る出会いもありました。
松尾芭蕉公園のすぐ隣で、お稲荷さんも周りに2つもあって、静かな下町の佇まいを感じられる観光地でもあるのですが、ナイスミドルの外人さんが、ふとつるさんの機材車を楽屋がわりにしている風変わりな音楽家たちである私たちに目をとめました。

「これから何をするのですか?」(英語)
と、尋ねられたので、
たっちゃんが、
「ペーパーピクチャー」と答えたそうです。

すると、その異国の方は興味を持って店内に入られ、私たちの出番を全編見ていってくれました。

そして、私たちの出番が終わると、
また機材車にいる私たちのところにきて、
パントマイムで私たちが劇中でしている「宇宙的なお辞儀」の真似をして、
メンバー全員に挨拶をしてくれながら、
言葉にならないけれど、
「こんな要素もあった、こんな箇所も覚えていると、いくつものポイントを振り返りテストのように身体で表現してくれました。
こんな素敵な身体で使えてくれるメッセージを私は生まれてはじめて受け取りました。

私たちの紙芝居音楽劇のセリフはもちろん日本語ですが、
音楽に助けられるのと、コドモでもわかるような単純なストーリー、
それに欧米公演の経験も豊富なたっちゃん&つるさんはマイムの要素もしつこいくらいに入れてくれるので、言葉の通じない外国の方にも通じたのですね。

今回の「ぺとらの新世界旅行」は、「月世界旅行」のジョルジュ・メリエスへのオマージュとして制作しました。奇術師であったメリエスが、映画という技術にびっくりして独学で撮影を学び、世界初のストーリーのある長編映画をつくった。それが「月世界旅行」だという事は皆さんご承知の事と思います。

初期の映画は、蒸気機関車が走る撮影して、それを室内の映画館で投影すると観客は「機関車に轢かれる」と逃げたそうです。そんな時代に、SF的な発想で月に行き、しかもそこには野蛮人がいたりしている。その王宮もある。西洋の物語に必要な洋式の要素が全部詰まっている完璧な作品です。

私は普段、幼稚園教諭として3歳〜6歳のこどもがわかるコトバの中で暮らしています。
それは、オトナ語とコドモ語くらい違うものです。
人生経験が短い彼らたちが、自分の目で見た事がありそうな事をいつも頭で必死で探しつつ、
今伝えようとしている新しい事と、その例との違いや、関連性などを導いて、イメージをつくらせて説明します。

そんな私が思いついたのが「超訳」というか、まぁオマージュなのですが、伝えたい物語の中でのポイントやエッセンスだけを取り上げて、かみくだいて別の形にしてみるという作業です。

2011年9月に「こどもの城」で連続4公演した「ぺとらの月世界旅行」、2012年3月に下北沢の親子イベントで上演した「ぺとらのマンドラゴラ」は、参加するコドモたちが自ら参加するコーナーを随所に設けながら、「メリエスの映画の中の世界」の中でおこりそうな出来事を組み立てていきました。

「ぺとらの新世界旅行」は、こども向けではなく「コドモ心を持ち続けているオトナ」を対象に制作しました。

「ぺとら」をやっていて、一番誤解されたくないのが、「コドモの真似をする」ことと、「コドモ心をもって表現する」ことは全く異なるということです。

例えば、「新世界旅行」の中で、茶碗を水の中で共鳴させて音階を出して演奏する箇所があります。コントやドラマの挿入や効果音。かつては音効さんがひとつひとつ手を使ってならしていたけれど、今ではそのひとつの音に人件費はかけられないから、どんどんとデジタル化していって、いつのまにかそうゆう技術自体が消滅していく危機にあると思うのです。
メリエスの時代の無声映画をみていくと、当時はサーカス文化も栄えていたので、動物の調教という面でも、いまでは想像もつかない演技をしている場面を見つける事ができます。今は、CGで何でもできるのではなくて、なんでもCGに見えてしまうような不幸な時代でもあると思うのです。

つるさんが劇の中でいきなり茶碗を取り出すと皆は笑います。当然、コントだと思うわけですね。
でも、その中には、ベテランのパーカッショニストだからこそできる芸がある。それを、本人も夢中になって表現をすることが、コドモ心だと思うのです。

メリエスの「月世界旅行」の終盤では、海の中に帰還した大砲が着水するところでは、クローズアップで魚が泳いでいます。マーティン・スコセッシュ監督の「ヒューゴの不思議な発明」では、その箇所が見事にカラーで再現されていて、撮影するカメラの目の前にうすべったい水槽があり、その中に生きた魚が泳いでいるのです。私の想像ですが、その魚を用意するためには、やっぱり魚の飼育に関するプロの親方がきちんとスタンバイしていて、太陽光の一番良いタイミングにあわせてのメリエス監督のキューを待っていたと思うのです。それぞれの道のプロが、きちんと自分の仕事を全うしている事が、映像から感じとれるのです。

「ぺとら」として、今、次の活動が予定されているのは、昨年、園に招聘した「喜劇映画研究会」とのコラボイベントのメリエスの映画の上映会と演奏ライブのみとなっているのですが、これで、私の中でひとつのシーズンが終わるような区切りとも思っています。

そもそも、何で園児たちにメリエスの「月世界旅行」を見せたかというと、話は、311の震災直後に遡ります。大きな被害をうけたり亡くなられた方もいることを考慮すればそんな事はと、思われると思うのですが、東京の幼稚園児にとっても、震災後しばらくは辛い時期が続きました。今まであたり前のように夕飯前にみていたこども番組やアニメがテレビからいっさい流れなくなったのです。おまけに、私たちの居住する地域では、計画停電もありましたから、真っ暗闇の中にペットボトルの湯たんぽで家族が密集する状況です。電気が通っている時間でもテレビでは繰り返し悲惨な被災状況ばかり報道されていました。

そこで気付いたのは、コドモたちは、いつのまにかテレビをとても受動的に見ているものになっているし、作り手側も展開を短くして、くいいるように見るような中毒的なものもあると思ったのです。仮面ライダーのシリーズがかわるごとにおもちゃ屋さんが儲かるような世の中のしくみも当然ですよね。

まり先生は考えました。コドモたちが、自分で空想をしてイマジネーションを広げられる力をつけなきゃ。工作もキット製作ではなく、自分で試行錯誤が体験できるような過程からとりくませるようにしなければ!

そのためには、私自身もイマジネーションを磨かなければ。こどもたちに率先してお話をつくり、絵を描いて、思考錯誤の工作の失敗所を一緒に工夫していきたいと思ったのです。

そうしてできあがった作品たちが、今のぺとらのメリエスオマージュシリーズです。
最新作の「ぺとらの新世界旅行」では、メリエス作品から私が感じ取ったメッセージがたくさん盛り込んであります。

序曲ではじまるところ、幕が開くようなオープニング、お辞儀は文化人の証?、野蛮人との出会い、蒸気機関車という乗り物への敬意、月が感情を持つこと、月を見守る守護神のような存在・・・。

私の専門であるリトミックも、実はメリエスと同じ時代に生まれています。メリエスの映画にたくさん出てくる今の感覚では少しふくよかなご婦人方が複数で出演されていますよね。例えば、大砲を際立たせるために、そのご婦人の集団が身体で造型をするのですが、それはリトミックでもあって「プラスティック」という分野となって、それが動くと「プラスティックアニメ」と呼ばれます。メリエスが、リトミックを知っていたかどうかはわからないし、感覚で感じているだけだけれど、とても似ているように思えるのです。

私は日本人ですが、バレエやリトミック、歴史的舞踏をしてきたし、カトリックの家に育ったので、西洋的な伝統や形式に親しみを持っています。ヘルタースケルターなドタバタ劇があっても、最後には人の声のハーモニーでハッピーエンドを伝えられるような展開と様式は、どこの国の人にも通じるものだと思っています。

冒頭に、深川での外国人のお客様についてのエピソードに触れましたが、彼が月役のたっちゃんには、月のお辞儀をし、王様役のきんど〜さんには、王族風の膝をおる礼をし、つるさんには茶碗を叩く所作を真似して讃えて、私には、内からこみあげるとジェスチャーをしてから、拍手をしてくれたこと。
私には、メリエス監督に伝わったような思いがしました。

私たちが寛いでいたつるさんの機材車には、紙芝居のセットや大道具の他に、つるさんが他の仕事で使うブラジルやアフリカの太鼓がわんさか積んでありました。

異国の通りすがりの方にとっては、私たちがその車で不思議なオペラを上演しながら旅をするキャラバンのように見えたのかもしれません。

そう思ってもらえているのも、楽しいな。
そう思った「紙芝居な休日」でした。

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コメント

ぺとらさんの紙芝居劇、とてもたのしかったです!
「街頭紙芝居」好き、「ジュール・ベルヌ」好き、おまけに映画「ヒューゴの不思議な発明」を観てメリエスの「月世界旅行」に興味を持ち、近くの図書館でビデオを借りて見てハマッていた息子がチラシを見て「ぜひ行きたいっ!!」というので、都下からはるばる参加しました。
期待を裏切らない、上質かつ笑いのセンスも抜群なイベントに、親子ともども大満足でした。

ひとつだけ気になることが・・・「きんど〜さん」というのは、70年代の少年ギャグ漫画の傑作「マカロニほうれん荘」とは関係ない・・・ですよね?
あれにマンドラゴラが出てきたことをフト思い出しました。

投稿: ふらふら | 2012年7月 3日 (火) 15時29分

>ふらふらさま

ご来場とご感想をありがとうございました。
私もジュール・ベルヌが大好きです。
小学生や中学生の頃に買い集めた岩波少年文庫をまだ大事にもっています。偶然の出会いが重なって、はるばる足を運んでいただけて、そして、私たちと笑いのツボが同じだった事が嬉しいと思いました。

「きんど〜」さんは、「きんど〜にちよう」さんがちょうど流行っていたのもあってのニックネームだそうです。私も、そのマンガは通っていた耳鼻科で全巻読んでいます。だから、「ハリーポッター」のように「マンドレイク」ではなく、「マンドラゴラ」と表記しているので、とても良いご指摘だったと思います。

ちなみに、「ぺとらの新世界旅行」のお子様バージョンは、「ぺとらのマンドラゴラ」と言います。月役のたっちゃんがいない3人編成で、銀河鉄道999がちょっと入ったお子様参加型の作品です。

私たちの作品を気に入っていただけて、そして、褒めていただいて大変嬉しいです。

投稿: まり | 2012年7月 3日 (火) 20時36分

ぺとらの皆様お疲れ様でした。
私自身 紙芝居というものを初めて拝見
させていただきましたが、予想以上の面白さで
大変素敵な時間を過ごさせていただきました。
なぜだか分かりませんが、劇を観ながらふと、来場されていた数組の親子の10年後の姿を想像していました。隅田川沿いのイベントスペースで観た紙芝居を親子で楽しそうに話す日曜日の風景です。やはり、紙芝居の主役は子供たちなのでしょうかね(笑)

機会を見つけ是非又 拝見させていただきます。

*あの外国の方は誰かの知り合いかと思っていたのですがフリーのお客さんだったのですね

投稿: 深川 J9 | 2012年7月 4日 (水) 22時27分

>深川 J9さま
ご来場ありがとうございました。

「紙芝居」というのは、日本の独自の文化だそうですね。
私たちも今時の紙芝居を追求する「KAMISHIBAING」
http://kamishibaing.web.fc2.com/
youtube
http://www.youtube.com/watch?v=ZUzaQWHLkOI
という仲間の輪に加わっていて、いろんなスタイルの紙芝居をみてきました。
「黄金バッド」などの時代の街頭紙芝居師「梅田佳声」さんのお弟子さんや、iPadを使ったデジタル紙芝居などいろんな「いまどき」があることを体験しました。
その結果、
「みんな違ってみんないい」
という結論に達し、音楽家である私たちができることで、あまり他の人がやらない事をやろうとしているのがこのスタイルです。
紙芝居といっても、実際は、背景で、人物はほとんどなく、キャストは、生の人間で飛び出している構造です。

私は、専門のリトミックの分野では、「幼稚園に特化しているし、ダンサーのようだ」と言われているし、幼稚園の先生にしては、ピアノが達者で音楽に凝り過ぎています。円グラフのはじっこにいるような「変わり者」と自覚しています。
つるさんは、パンデイロの第一人者ですが、ブラジル音楽の業界の中では、異彩の人です。パンデイロを使って、ロックをやろうとしているからです。
近藤さんも、古楽奏者なのですが、頼んだたいていの事は、嫌な事をせずにやってくださいます。ただ、中世の放浪楽師という彼のメインテーマだけは、私も大事に思っています。
たっちゃんは、天才で、似ている人を見た事がありません。

そんな4人のメンバーが、大の大人として真剣に取り組むのには、とても良い感じの「紙芝居」だと思っています。

「表現」は、気持ちが良いと思っています。

これからも応援、よろしくおねがいいたします。

投稿: まり | 2012年7月 5日 (木) 05時43分

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